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伝伝虫通信バックナンバー 通巻28号
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世界中で児童労働に従事している子どもたちは、約2億1,800万人

児童労働とは・・・概ね15才未満の子どもたちが、十分な教育や成長の機会を与えられずに働くことをいいます。また、18才未満の子どもが心身の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働に従事している場合は「最悪の形態の児童労働」といいます。

働く子どもたち エピソード12

カンボジア王国
面積:181,035k㎡
人口:約1,480万人 首都:プノンペン

ゴミ捨て場で働く少女 夢は見たことがありません。

ごみ捨て場で働く少女 夢は見たことがありません。

カンボジアの首都、プノンペンの外れにステンミエンチャイと呼ばれるゴミ捨て場があります。初めて、ここに足を運んだのが1998年のこと。中に入るとたくさんの人々がゴミを拾っていました。彼らはゴミの中からビニール袋、プラスチック、ビン、アルミ缶、鉄くずなどのスクラップを拾い、ゴミ捨て場の廻りにあるリサイクル業者の下へと運びお金に換えて生きていました。

ゴミを拾う人々の中には多くの子ども達が居ました。悪臭が立ち込め5メートル先も見えないほど煙が充満し目を開けることさえ出来ないほど。メタンガス、ブタンガス、ダイオキシン、硫化水素など、人体に有害な物質が含まれる煙の中で子ども達は黙々とゴミを拾う。彼らは、ごみ収集車が入ってくる時間帯の夕方の6時ごろから翌朝の5時ごろまで働くことが多い。トラックからゴミが降ろされと我先にと走っていく。大人に突き飛ばされても必死になってごみの中に突っ込んでいく。少しでもいいものを拾うために、今日を生きるために。

耳をつんざくような凄まじい轟音を立てて大型トラックが通り過ぎる。モウモウと立ち込めるホコリの中から少女が現れた。拾ったゴミを入れるための大きな袋をかついでフラフラとやって来た。体は、やせ細り、腕は小枝のように細い。「こんにちは」と声をかけると見知らぬ外国人に少し驚いたような顔で私を見て、そして、後ろを振り返った。自分に声をかけたとは思っていないようです。もう一度「こんにちは」と呼びかけると、人差し指で胸をさし「私ですか」と聞いてきました。そうです「あなたですよ」と言うと、恥ずかしそうに下を見ながら近づいてきました。

この少女の名前はハーレちゃん。年齢は10歳です。お父さん、お母さんと弟、妹の5名家族。彼女は家庭が貧しいために学校へ行く事が出来ません。でも、勉強がしたくてたまりません。文字の読み書きさえも出来ない自分を恥ずかしく、悲しいと思っています。そんな悲しい思いを弟や妹にさせたくない。だから彼女が働いて、わずかながらのお金を稼いで弟と妹を学校に通わせています。そんな優しい、おねえちゃんです。「今日は、どんな物を拾ったの」と袋の中を覗いてみると、燃料にでもするのだろうか中身の半分ぐらいは板切れや材木の切れ端だった。それ以外には新聞紙などの古紙、壊れたおもちゃ、ビン、空き缶、プラスチックなどでした。ゴミ捨て場近くのリサイクル業社で回収されたごみの値段を調査してみたところ、おおよそではあるが、紙くずは1キロ20円、プラスチックは1キロ40円、鉄くずなどのスクラップは1キロ80円ぐらいでした。子ども達が稼ぐお金は、一日で80円から120円程度。凄まじい環境の中で長時間働いても稼ぐお金はたった、それだけです。

「あなたの夢はなんですか」とハーレちゃんに聞いてみたのですが、彼女は何も答えません。ズッと黙っている。そして、とうとううつむいてしまったのです。しばらくして悲しそうに顔を上げて「夢なんか一度も見たことがありません。だって生きるだけで精一杯だから」と小さい声で言いました。そして、自分の体の半分ぐらいもある大きな袋を担いで去っていきました。

彼女の小さな背中を見ながら、自分の10歳の頃を思い出していた。小学校のほとんどは沖縄本島北部の本部町で暮らしていた。海がキレイな小さな町です。貧しくとも生きるだけの食べ物はあった。毎日、海で泳ぎ、山を走り回っていた。大きくなったら外国を飛び回る仕事がしたいと夢があった。今日を生きるために必死になって働く少女が居ました。日本の子ども達に知ってほしい。夢を見ることをあきらめた10歳の少女がいることを。

1対99 本当に支えているのは誰か。

ネパール HIVに感染した母子 この母と子をまもっているのは会員の皆さんの善意です。

私は、アジア途上国の貧しさの中で生きる人々のことや、生きることさえもままならない深刻な状況でも懸命に生き抜く子ども達のことを2010年8月現在で2330回の講演や講和などを通して日本全国で伝えてきました。

ゴミ捨て場に暮らす子ども達、売られていく娘達、ハンセン病やHIVなどで差別を受け、絶望的な苦しみの中でも必死になって生き抜く人々の現状を知ると、ほとんどの日本人は感動し、アジアチャイルドサポートの活動に賛同いたします。しかし、サポーターとなり、お金を出して応援をいただく方は、ほとんど居ません。これは当然のことです。見返りが無いものにお金を出さないのは当たり前のことです。自分のお金はたとえ100円でも惜しいものです。

日本人は素晴らしい民族です。見返りが無いものに対して私の話を聞いてくれた方や、書いた本を読んでくれた方の中で、100名に1人はアジアチャイルドサポートの会員となりアジア途上国の人々を応援してくださる皆様がいらっしゃるのです。「企業は社会に貢献するのは当然だ」と語る経営者も居ます。「分かち合い支えあうことが大事だ」と考えている主婦の方も居ます。「日本人も助けられたのだから」と感謝の想いを込めて応援してくれるサラリーマン、「自分に出来ることがあった」と重度の障害を抱えながらも、大きな愛に満ち溢れた方も居ます。実にありがたいことです。アジアチャイルドサポートの活動資金は政府や県など行政からの助成金はありません。特定の企業や組合や団体などからの支援金もほとんどありません。一人一人の心温まる浄財で運営しています。

一人の小さな力ではありません。大きな力です。ミャンマーやカンボジアに作られた井戸は600基近くになります。学校は70校近く建設いたしました。HIVに感染した女性達、親に見離された子ども達、ハンセン病で苦しむ人々の命を支えています。安全な飲料水を手に入れることが出来るようになった人々は20万人にも及びます。教育を受けることが出来るようになった子ども達は3万人を超えています。今日の食べ物さえ手に入れることが出来なかった人々の命を1000名近く支えています。これは全て会員の皆さんのお陰です。多くの子ども達に夢を与え、多くの人々の命を支えているのはアジアチャイルドサポートのサポーターの皆さんです。皆さんの見返りを求めない善なる心が多くの命を支えているのです。心の底から深く感謝いたします。