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伝伝虫通信バックナンバー 通巻33号 ③
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ラオスレポート“想像を絶する山岳地帯の暮らし”

水と病気“3000名の人々が必要としているのです”

蛇口にしがみつして水を飲む少女

ラオスは、1960年代の内戦中、アメリカ軍により国民一人当たり1tの爆弾が落とされたといわれています。特にラオス北部にあるシエンクワン県は、国内で最も多くの爆弾が落とされた地域。家や寺院等、形のあるもの全てが破壊され尽くし、“残されたのは荒れ果てた大地と爆弾投下で出来た巨大な穴だけだった”と、内戦を生き抜いた人々は口を揃えて言います。今も、クラスター爆弾を始め不発弾による被害が後を絶ちません。

今回私たちは、水を手に入れることが難しく、厳しい生活にあえいでいると聞き、山岳地帯の村に調査に向かうことにしました。

ペク市の中心部ポンサワンから東に向けて1時間が経つころには、私たちの車はのどかな農村地帯を抜け、赤土がむき出しの悪路を、土煙を巻き上げて走っていました。車内は窓を閉めていても埃っぽく、道路沿いに点在している村々は車が通るだびに建物もはっきり見えなくなる位土煙が立ち込め、人々は顔を覆って耐えています。こんな凄まじい土埃の中で生活するなんてとんでもない、これでは病気になってしまう、とぞっとしました。

ポンサワンを出てから約3時間、お昼前に着いたのがコトン村とヨードサオ村、両村の水事情は深刻でした。何kmも離れた水源から水を引いているのだが、乾季には枯れてしまうこともあります。近くにいた少女が“こうやって水を飲むのよ”と、一滴の水も無駄にできないというように蛇口をシッカリくわえて飲んでいました。水の無いこの地域では、お米を育てるできない為、とうもろこしを栽培し、それでも家族が食べる分には十分ではなく、生活は非常に苦しい。

土煙の舞う乾いた大地次に向かったのがプホアサン村。ひどい揺れに振り回せながら曲がりくねった山道を移動すること1時間、やっとの思いで到着しました。村人たちと共に井戸建設の調査等を行っていると、村長さんが深刻な表情で突然、「水事情も大変ですがそれより困っていることがあります。ここには大変責任の重い病院があります。地域一帯の11村3000名の命を支えているのです。でも、ボロボロでまともに診療できない状態が続いています。どうか助けて頂けませんか?」と訴えてきました。

村の中心から更にきつい坂を上がったところにその“病院”はありました。錆びたトタンで囲まれたほったて小屋。傍らには黒焦げになった柱が残っている。2005年に政府によって建てられた病院が2009年に火事で全焼、政府も予算不足で再建することができなかった。困り果てた村人たちが材料を寄せ集めて何とか自力でこの小屋を建て診療を続けているとのことでした。詳しく事情を聴こうと思った医師が不在だった為、調査を諦めてこの地を後にしようとした、その時、強烈な太陽の日差しが照りつける猛暑の中を一人の若者が駆けつけてきました。汗だくになり、息を切らしながら“間に合って良かった、ようこそお越しくださいました、私がここの医師です!日本からの支援団体が村を訪問していると聞き、ぜひ話を聴いて欲しいと思って走って来たのです”と言いました。

生涯、故郷の人々の為に診療を続けるのが私の願い

青年の名はクートーさん30歳。モン族出身の彼は、奨学金を獲得して隣の県ルアンパバーン大学で医学を学んで医師となり、奥さんと2歳の子どもと一緒にこの村に戻ってきた。『生涯、故郷の人々の為に診療を続けていくのが私の願い』と熱く語ります。現金収入の殆んど無い村人達から診療代を貰うのが忍びなく、3割だけお金を貰い、薬代などの足りない分は自腹をきって診療を続けているとの話を聞き、頭が下がる想いでした。“この病院は地域一帯3000名の人々の命を支えています。毎日、沢山の患者さんが通い、ここで出産する女性達も大勢います。でもここは一つも窓が無く、電気も通っていないので、明かりのない真っ暗な中で限られた器材で診療するしかありません。遠くの村から診て貰いに来るのにまともな入院設備もない。特に、周産期の女性の診療状況は深刻で、安心して子供を産める環境ではありません。このままでは救えるはずの多くの命が失われてしまいます。政府には病院を再建する予算はありません。でも、村人たちが安心して生きていくためにはしっかりとした病院が必要です”と、クートー医師は、目に涙を浮かべながら説明してくれました。

クートー医師の必死の願いを受け入れて、アジアチャイルドサポートは病院建設の支援を決定しました。当団体のサポーター賛助会員の皆様とご賛同くださる沢山の皆様方の浄財が、3000名の命を支えることになりました。皆様のご理解とご協力が確実に大きな力となっています。今後とも、益々のご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

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