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伝伝虫通信バックナンバー 通巻42号 ①
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取り残された集落

思い出プロジェクト 東日本大震災復興支援

石巻市荻浜支所の支所長として地区の復興に精力的に取り組んでいた木村さん(写真、下)は、住民の方々から「思い出の写真が全て流されて1枚も残っていない」、「結婚式で披露する思い出スライドも作れない」、「街に出た子どもたちが帰ってきても、家族団欒の時間に写真を見て懐かしむことも出来ない」等、写真を失った切実な声を聞き、その対応を模索していました。ちょうどその頃、この地域で活動していた私たちアジアチャイルドサポートと、幾度もの協議を重ね、支援事業「思い出プロジェクト」が始まりました。

木村さんを実行委員長とし、荻浜小学校、東浜小学校、荻浜中学校の3校に保管されていた、8~30回生までの24年分の卒業アルバムや記録写真を借り受け、1万枚以上にも のぼる写真を、石巻市内の写真館にて1枚1枚丁寧にデータ化。一人ひとりの卒業年度に合わせ、テレビとパソコンで楽しめる鑑賞用と、写真プリントや編集可能なデータ用の2枚1組に編集。実に2年以上かかって完成することができました。

平成29年9月末、浜の歴史の1つともいえる同地区荻浜小学校の体育館(休校中)を特別にお借りして寄贈式を行いました。

会場となった荻浜小学校
会場となった荻浜小学校

式典には、卒業生をはじめ、歴代の父母教師会会長の皆さん、東浜小学校・荻浜中学校の校長先生、同地区の行政委員連合会会長、現石巻市荻浜支所長、漁業関係者の皆さんにもご出席いただき、卒業生代表の方にDVDを手渡し、実際に上映したり、プロジェクトに対する思いを語っていただきました。

寄贈式のようす
寄贈式のようす

「故郷に思いをはせるきっかけに」 実行委員会 木村委員長

地区の方々の切実な声を聞き、どうにかしたいと考えているとき、震災直後から荻浜に足を何度も運び支援をして頂いているアジアチャイルドサポートから、是非プロジェクトを進めましょうと背中を押していただきました。

家族、友だち、学校、故郷、かけがえのない思い出の写真は、時に大きな力となります。希望を与えてくれます。DVDが今後、皆さんの笑顔に、故郷に思いをはせるきっかけになれば幸いです。

「凄く力になります」 卒業生代表 荻浜中学校 第14回生卒 豊嶋さん

大震災の後、ずっと足が遠のいていた荻浜小学校につい最近来る機会かありました。やはり学校は思い出深く特別な気持ちになる場所だと改めて実感しました。家が流され地元を離れ、帰る破郷も、思い出の写真も失ったわたしたち卒業生にとって、このDVDは凄く力になります。この思いを大事に、これから地域のために出来ることをしっかりとやっていこうと思います。

「心にとどめることができる」 父母教師会 甲谷会長

荻浜小学校は、子どもたちの声か聞こえなくなって数年が経ち、来年の3月をもって閉校となることが決まりました。でも、この思い出プロジェクトのDVDをとおして、一人ひとりの心に残っている思い出がいきいきと甦り、いつまでも心にとどめることが出来るものであると、心から感謝しております。

卒業生の声

今は浜を離れて街の大学に通っています。大学の友だちからは小さい頃の写真などを見せてもらったりするのですが、自分は見せることができず切ない気持になっていました。今度、頂いたDVDをみんなに見せたいと思います。有難うございました。

震災の時に、家族の写真は全て流されてしまいました。今回のDVDは本当に有難いです。上映会で見せてもらっただけで涙がこみあげてきました。あらためてじっくり見たらきっと泣くと思います。家族みんなで見せていただきます。

このDVDは、一人一人の思いをつないでくれる。たとえ僕らの世代が帰って来れなくても、これを見た次の世代が、ここの出身なんだと言って帰りてきてくれる。そんなきっかけになるような存在だと思います。

「偉大な人物になると心から思っています」 ACS代表理事 池間哲郎

 思い出を失うことは辛く大きな悲しみです。プロのカメラマンとして、写真がいかに大事かということ、そして人生の糧となることも良く分かっています。それを失った皆さんのために、このプロジェクトをやりたいと木村さんから伺った時、絶対にやるべきだと思いました。震災を乗り越えてきた若い皆さんや、地元に残り踏ん張っている先輩方が、さらに前進しようと頑張っていらっしゃる。お一人お一人が偉大な人物だと心から尊敬しています。このDVDで、皆さんにお力添えできれば幸いです。

卒業生代表挨拶 豊嶋さん
卒業生代表挨拶 豊嶋さん
卒業生のみなさん
卒業生のみなさん
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