日本の9倍の国土に11倍もの人々が暮らすインド。人口は既に13億人を突破しているという中国をしのぐような勢いのこの国について、皆さんはどんなことを思い浮かべますか?
ガンジー、アーユルヴェーダ、カレー、インド象など色々思いつきはするけれど、実際どのような国かと聞かれると、うまく言葉が見つからない方も多いのではないでしょうか。
大の親日でもあるこの国。じつは、30年以上にわたって、広島と長崎に原爆が落とされた時期に毎年、議員の皆さんが国会において黙とうを捧げてくださっています。いったいどのくらいの人がこのことを知っているでしょうか。私達日本人も、インドの歴史や文化、宗教、慣習などについてもっと関心を寄せられたら良いなとつくづく思います。
現地から保育園運営の資金が枯渇しているので助けて欲しいと連絡があり、視察に向かいました。 インドの首都ニューデリーからヤムナー川を隔てた東側に位置するイーストデリー。大通りを進んでいくと車やバイク、自転車、リキシャそして人が縦横無尽に行き交っていて、その賑やかな喧騒に圧倒されます。 ある場所にくると、大通りを挟んだ向こう側に異臭を放つ巨大なゴミ集積場が見えてきました。まるで一つの町のよう。このゴミ集積場にはローカースト、アウトカースト等非常に貧しい人々が実に5万世帯以上も暮らしているといわれており、彼らはゴミの収集・仕訳け・販売等で生計を立てています。
この一帯には様々な犯罪やアルコール/麻薬などの薬物中毒、児童労働や売春など探刻な問題が蔓延しています。調査のため、私達もカウンターパートナーと一緒にゴミ山に入りましたが、眼光が鋭く人相の悪い男たちが集まってきて、一挙手一投足を見張るように取り囲み始めたため危険と判断し、10分足らずで退去しなくてはなりませんでした。
ここで働く人々は幼児でもゴミ山に連れて行かざるをえません。家族総出で仕事をするため子どもの面倒を見てくれる人がいないからです。その子ども達の多くは5、6歳頃からゴミ拾いの仕事を始めます。自分の食いぶちを自分で稼がなくては家族が暮らしていけないからです。ぎりぎりの生活をしていますから、せっかく小学校に入ってもゴミ拾いの仕事に戻ってしまう子もいますし、アルコールや薬物等惑わされたり犯罪等に巻き込まれたりして道を踏み外す子も後を絶ちません。環境が良くないとわかってはいても、あまりの貧しさの為にこの暮らしから抜け出せず、子ども達を安心して健全に育てることが難しいという悪循環が続いているのです。
そこで(1)親に対して「教育は貧困から抜け出す第一歩である」という啓もう活動を重点的に行う(2)子どもたち自身に保育園に通う習慣を身につけさせることで「就学適齢期になったら小学校に行くのが当たり前」という意識づけを行う、という取り組みを続けることで、ごみ集積場のコミュニティー全体の環境を良くする為のいしずえになりたい、というカウンターパートナー達の姿勢に賛同し、昨年7月から運営支援を始めました。
現在10か所において合計約200名の子どもたちの面倒をみています。先生が自分の家の一室を保育園にし、約20名を担当。数十件が軒を並べる同じ路地に住む子ども達を対象とするのでガリスクール(路地の学校)といいます。
親たちも同じ路地内に住む先生の人となりを知っているので、安心して子どもを預けて仕事に行くことができます。保育園児達の健康管理と簡単な食事の提供も行っています。 地域の人材やそこにある環境をできるだけ利用しし、幼い子供達が無料で通える安全で健康的な保育環境と、小学校にあがる為の準備教育を提供するこの制度は、あくまで「自分達の町を自分達の手で艮くしている、自分達の子ども自分達で育てている」
という実感を持って貰うことを大切にしているので地域住民の理解と協力も得られ易く、環境改善にも繋がるという一石二鳥の素晴らしいプロジェクトなのです。
先生のあとに続いて意気揚々と英単語や数字を暗誦したり、競って皆の前で暗誦のお手本役をしようとする姿は、彼らの明るい未来を物語っているようで、とても胸を打つ光景でした。昼食も出ますし、お医者さんによる健康チェックもあるので保護者達からの評判も上々です。しかし今回の事業で支えることができているのはほんの一握り。十数万人の子ども達が同じようにこのゴミ山で暮らしているといわれていますが、危険と隣り合わせの地域でもある為、慎重に進めていく必要があります。